Monday, June 18, 2012

システム開発と単語帳のない外国語学習

1 はじめに

エルムラボに参加させていただいて、私自身の取り組む学習(プロジェクト?)の概要を発表いたします。
公には「中国語学習」(私の現段階では初級)を掲げましたが、普通の外国語学習では面白くないので、なんらかの付加価値を見いだすことに挑戦しようと思います。これは同時に、モチベーションの維持にも繋がると考えており、そして同時に 知識の多角化 にも発展すると思います。 このブログのタイトル、「Knowledge Has No Boundary」にもあるように、知識には 境界線 というものがありません。人間の知識は全てなんらかの関係を持ち、教育の過程で分岐されるのは単なる便宜上のものです。知識を得る過程でむしろこういった便宜上の境界を意識せず、「知識世界」を自由に定義し取り組むことが、知識吸収力の向上並びに、応用力の向上へと繋るのではないかと思います。当然、「中国語学習」という観点からはかなり遠まわりになることは否めませんが、長い目で見た近道を目指します。
これから取り組むのは当然「中国語学習」ですが、二つの大きなコンセプトを付加しようと思います。
  • システム開発によるオンライン教材活用の効率化
  • 単語帳のない外国語学習法の確立
というものです。当面の間は、自身の大好きな高機能エディタ、Emacsを使ってこの方法を進めていこうと考えています。勿論Emacsユーザー自体多くいるはずもないことは承知していますが、結果的に良いものとなればWebサービスという形に(おそらくRailsで)発展させることを視野に入れていますので、ITに精通している方には特にコンセプトだけでも目を通していただけて、意見・批判などを頂けたらと思います。
まず初めに、「境界のない知識」について説明し、その後、具体的なプロジェクトコンセプトを説明します。

2 Knowkedge Has No Boundary

「中国語」と一口にいっても、一つの言語は多くの側面を持ちます。 現在使われる中国語と、過去のそれとは大きく違っているでしょう(ここでは中国語の細かい分類は無視しています)。その変化・発展には歴史が反映され、文化が影響し、社会情勢を写します。かたや純粋に「言語」という観点からは、その構造や発音を母国語と比較することに加え、機械(コンピューター)による処理(自然言語処理)や、心理学的側面を観ることができます。もちろんこの図で表わされる以上の可能性があるでしょう。


単に一つの外国語として捉えるのではなく、無限に広がる知識世界の ハブ として認識し、その学習過程で多くの開かれた可能性を意識することで、その後の可能性を広げることができるのでは、と考えています。その 知識世界 定義は十人十色で、私自身の場合は、自然言語処理とシステム開発、そして、人間の記憶を司る、心理的側面を組み合わせてみようと思っています。
私は飽きっぽいため、外国人との会話という単純な目的意識では作業も単調になり、学習を継続するモチベーションを維持するのも困難になりかねません。こういった既存の教育方法に囚われない学習法こそ、21世紀の新しい教育機関に問われるのではと思います。

3 新時代のローカル学習環境:システム開発

新時代の学習方を開拓するならば、UI(ユーザーインターフェース)を研究するのも当然のこと。
インターネット上に様々な学習教材が存在し、無料で提供されている多く、学習への金銭的コストは多きく下る現代。同時にその情報の膨大さ故、情報リテラシーが高くない人々には混乱の原因になりかねません。それはコーディネータという情報通な人達が解決してくれるでしょう。しかし問題はそれだけではないと考えています。

3.1 操作性では紙のノートや書籍にはまだまだ敵わない

インターネットがいかに情報化を加速させたとはいえ、こと教育のプロセスを考えると、情報の一方通行ではなく、 ユーザー自ら相互的に活動すること が不可欠です。紙とペンのアナログで言うと、ノートにまとめたり、問題を解いたり、といった活動を示します。
その手軽さや低コスト化が進む電子書籍も普及するなかで、今だに紙の書籍を好む人は多いでしょう。この私自身もできることなら紙で出版された書籍のほうが好ましいと考えています。ノートも同じように、ペンを持ち、紙のページに書くという手軽さは捨て難いという人は今だに多いでしょう。そこには自分の手で持ち、操作し、保存や閲覧をするという、 操作感 を感じとることができます。
こういう意味で、インターネット上の教材やシステムはまだまだ手軽さに欠け、Webブラウザ上とはいえ、分散したページ間をあっちへこっちへと飛び、まとめるのは手元の紙のノートかパソコンソフト。これでも効率的といえばそうでしょうが、システム開発次第では更なる向上の可能性があると思います。
現段階では残念ながら、現存するWebサービスがAPIを公開してくれなければ、それらを統合して個々のユーザーに合ったUIを構築することは不可能かもしれません。しかし、研究課題としては将来の展望を見据えて、今から取り組む必要性を強調します。

3.2 Emacsの可能性:全てを統合するもの

IT系の方なら、使わないまでもその存在はご存知かもしれませんが、細部までカスタマイズ可能な高機能エディタです(Wikipedia: Emacs
※プログラミングに精通していない方は、間違ってもEmacsを使おうとは思わないでください!必ず挫折しますw
その可能性はプログラミングのみならず、通常の文書作成からWebブラウザ、Twitterクライアント、様々な計算ソフト(Maxima, R, Octaveなど)のインターフェースとしても活躍します(ちなみに、このブログの文章もEmacsで作成し、HTMLを自動生成しています)。
とても特殊なものなので万人向けではないと承知していますが、なによりも私自身の手によく馴染んでおり、効率的な学習UIを研究するにはとても良い材料になります。

4 単語帳のない外国語学習

私は外国語学習において、「単語帳」で暗記作業というものはデジタル・アナログ問わず、非効率だと考えています。
外国語学習において、暗記作業は欠かせません。インターネットの普及に共なって、瞬時にどんな情報を得ることが可能になっても、こと外国語学習においては単語や表現を完全に暗記してく必要があります。瞬時に理解し口頭や記述による生成は、暗記以外に方法はないことは確かでしょう。ここで問題にするのは、その暗記する方法です。
古来より単語帳なるものを作成し、何度も繰り返し見返し、記憶に焼き付けていく作業が行なわれてきたと思われます。それはデジタル化が進んだ現代でも変らず、電子端末が紙のそれを代価したにすぎません。その方法を無駄とは言うつもりはありません。もっと効率的な方法があるのではないかと思うのです。

4.1 最終的にどんな記憶となればいいのか

外国語学習の目的は実践力です。対人であれどうあれ、必要な表現を間髪入れずに理解・生成する必要があります。まず、外国語を習得するまでの語彙の習得はどいう経緯を辿るかをみてみましょう。

  • 模索期:単語の暗記を繰り返し、記憶の中を 意識的 に検索する時期。一応は暗記はできているが、瞬時には出てこない
  • Passive vocabulary phase:外部からの情報(読み・聞き)によって、瞬間的に単語の意味を思い浮べることができる
  • Active vocabulary phase:自ら必要な単語を瞬時に発声・記述できる
これは本題とは少し逸れますが、日本の現状では「Passive vocabulary phase」以上がその外国語を出来ると判断される傾向があります。TOEICなどの試験の問題点はこの段階までを測る内容になっていること。しかし、本当に語学力が問われるのは「Active vocabulary phase」であることは覚えておく必要があるでしょう。


このように学習プロセスを考慮すると、先程の「境界のない知識」と深く関係しています。

4.2 ネットワーク型知識

例えば一つの単語を考えましょう(わかりやすいように、日本語を使います)。「法律」という単語を考えます。「法律」を思い浮べてください。頭のなかにどう表現されますか?
「弁護士」、「裁判所」、「国会」、「犯罪」…どんどん関連単語が思い浮ぶでしょう。専門分野に近い「法律」という単語でも、限りない 関連性 が生れます。

「歩く」ならどうですか?無限に関連単語が思い浮かぶでしょう。これが 言語の記憶 なのです。言い換えると、
  • 単語はそれ単体で存在するのではなく、他の単語との 知識ネットワーク を構成する一つの構成員
  • 知識ネットワークは動的に変化する柔軟性を持つ

このように、一つとして独立した単語は存在しない。全ての単語や表現は他のものと関係を持ち、 その 関係性を断ち切って暗記した単語は、外国語のために生きた記憶とはならない のです。

4.3 積層型知識

これは数学などの知識と比べるとより一層明確になります。
算数に始まり、高等教育では数学へと発展するこの学問で得る知識は「積層型」です。 基礎となる(この場合は算数の)知識を土台とし、それを応用し更なる知識を上に詰み上げる。こうやって積み木のように積み上がった上層部の知識は、下層の知識を必ずしも必要とはしません。なぜなら既に 下層の知識が上層の知識に組込まれている からです。

Civilization advances by extending the number of important operations which we can perform without thinking of them.
by Alfred North Whitehead
その点、語学の知識は違います。 全てがネットワーク化 され、各々の知識に頻度の違いはあれど、優劣はありません。

4.4 従来の単語暗記作業の問題点

単語帳は個々の単語が単体で表記されているのが通常です。文章で複数の単語をまとめて暗記を効率化しようとする方法もあります。しかし問題は、どちらでも 静的バラバラ な記憶を確立させるという点。

たった一つの単語でも、それが使われる状況は無限に存在し、そしてそれらの状況を事前に予測することはまず不可能です。一つ一つ暗記した後、いくつもの会話などの練習の後に、個々の単語を知識ネットワークへと昇華させていくのが従来の方法です。これが非効率だと思います。どんな単語であってもそれを携える記憶は常に 動的 である必要があり、それを身に付ける過程は 動的である、かつネットワーク型であることを常に意識できれば効率化が図れる のではないかと考えています。


初めからネットワークを築いていければ…

4.5 単語帳のない、とは?

単語帳がないと言っても、完全になくなるわけではありません。あくまで、ユーザーには単語帳の存在を感じさせないシステムを指します。それは、
  • 学習進歩と平行して、 個々のユーザー独自の知識ネットワークを模倣したデータベースを動的に構築していき、ユーザーはそのネットワークを自在に辿ることで、自身の記憶へと転換していける
というものです。
従来であれば、
  1. 文章などのソースからまだ知らない単語を選び、リスト形式で記入(もしくは電子端末などに入力)
  2. そのリストを何度も見返して暗記を試みる
  3. 再度単語がなんらかのソースで出現した場合、自身の記憶を探り、単語の意味を思い出す
  4. 1~3を繰り替えす
という流れになるでしょう。プログラムの力を使いそれを
  1. ユーザーが使う外国語のソースから、プログラムで単語帳を自動生成
  2. 単語データベースを元に、次にユーザーが使うソースを分析し、個々の単語の情報(既知か、新出か、頻出か、など)を検出
  3. ユーザーはその情報を元にそのソースを読み解く(必要に応じてデータベースから意味を確認)
  4. 1~3を繰り返す
  5. その都度、ユーザーの確認作業をもデータ化し、学習パターンの統計データを取る

一見前者と後者は(1~4に関しては)同じもののように感じるかもしれませんが、大きな違いがあります。 後者では、ユーザーが読み解く以外の操作が自動化されるため、実際の「読み解く」回数を格段に向上させることができ、知識のネットワークを自在に辿ることができる (はず)。

ユーザーは単語と出会うたびに、この学習システムは導き出される関連性を生成・蓄積していきます。そのデータベースは個々のユーザーに合せてつくられているため、 そのユーザーの記憶を模倣した知識ネットワークを構成 しています。単語を独立した存在ではなく、ネットワーク全体として記憶に焼き付けていければ、と考えています。

5 おわりに

これはあくまで実験です。システムが完成したとしても、実際に外国語の向上につながらなければ意味がありません。自分で外国語を勉強しながら、自分で実験するという試みです。 上手くいくといいなぁ、としか今の段階では言えませんw

Author: Soichi
Org version 7.5 with Emacs version 23
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